不眠症は楽じゃない!

元・不眠症、現・睡眠健康指導士の睡眠コラム

1日2時間睡眠を可能にするアイマスク「Neuro:on」を買おうか悩んでいる人へ

最近2時間で8時間の睡眠の効果が得られると話題のアイマスク「Neuro:on」が話題になっていますね。

 

 

これらの記事が本当ならば、睡眠時間を減らしたい人や睡眠障害で困っている人にとっては夢のようなアイマスクと言えるのではないでしょうか。

 

この夢のようなアイマスク「Neuro:on」についていろんな記事を見ますが、その実用性や仕組みについて睡眠学の観点からしっかりと分析された記事はまだ見かけたことがありません。

 

「Neuron.on」の価格は5万円を超えます。決して安い買い物ではありません。

 

「本当なら5万でも買うけど、これってほんと・・・?誰かこれが本当なのか検証してくれ!」

 

といろんな記事を見ながら思っていました。ただ、一向にそのような記事は出ず(知っていたら教えてください)、誰も書かないなら、自分で調べて書いてやろう!と思ったのがこの記事の始まりです。

  

今回参考にした睡眠のテキストはこちらです

 

医療・看護・介護のための 睡眠検定ハンドブック

医療・看護・介護のための 睡眠検定ハンドブック

 

 

 

 2時間で8時間の睡眠の効果は得られるのか?

一番気になるこの部分から分析していきたいと思います。

 

「Neuro:on」では2時間で8時間の睡眠効果という夢のような機能を多相睡眠を実現することで、可能にすると謳っています。

 

そもそも多相睡眠とは一日に複数回の睡眠をとることを言います。

しかし、現在ほとんどの人が夜にまとめて眠る単相睡眠をとっています。

 

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では、一体どんな人が多相睡眠をとっているかというと、緊急災害に対応しているレスキュー隊員や数週間も続く、大西洋横断ヨットレースに参加しているヨットマンなど、物理的に長時間寝ることができない人たちです。

 

ヨットマンの例で言うと、4時間働いて、30分間眠るという行動をとっていました。

 

この例でいくとヨットマンは一日に3時間しか寝ていないにもかかわらず大西洋横断という大仕事をやり遂げたことになります。一般的に5時間以下の睡眠は日中の活動に悪影響をもたらすと言われているので、本来3時間睡眠ではそうとうきついはずですが、多相睡眠により睡眠時間を減らしても問題なく活動できるようになったとも言えます。

 

このような睡眠時間が物理的に限られている場合の緊急時の仮眠は、一度にまとめてとるのではなく、通常の睡眠時間の60%程度を何回かに分割してとるのが有効であると言われています。

 

つまり多相睡眠を実現することで、睡眠時間を減らすことはある程度可能であることがわかります。

 

ただし、「通常の睡眠時間の60%」という制限があるので、だれでも2時間まで減らせるというわけにはいかないようです。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチは4時間ごとに15分間ずつ、一日合計90分しか寝ていなかったいう噂がありますが、これはダ・ヴインチが通常の睡眠時間が極端に短いショートスリーパーであったので実現できたことだと考えられます。

 

さらに多相睡眠は緊急時にやむなく取られている睡眠法であり、長期間の多相睡眠が体にどのような影響を与えるかはわかりません。

多相睡眠をどうやって実現するか

さきほどの分析から、多相睡眠を活用することである程度は睡眠時間が減らせることがわかりました。しかし、多相睡眠を実現するだけなら、「Neuro:on」がなくても可能です。「Neuro:on」は多相睡眠の効率を上げる3つの機能があると考えられます。

 
①アイマスク機能
②睡眠ポリグラフ(に相当する)機能
③すっきり目覚まし機能

 

①アイマスク機能

多相睡眠を実現しようとすれば、明るい昼にも寝なくてはなりません。

また暗い部屋での睡眠は明るい部屋での睡眠より質が良いと言われています。

そのためにいつでも暗闇をつくれるアイマスク機能は多相睡眠には必須と言えるでしょう。

 

②睡眠ポリグラフ機能

「Neuro:on」は脳波、筋肉の弛緩状態、目の動き、脈拍と血中酸素、体温、睡眠中の身体の動きなどを測ることができ、通常は病院で数万の費用がかかる睡眠ポリグラフ検査と同等の記録ができるそうです。この記録をもとに自分好みの睡眠スタイルに導いてくれるとのこと。なるほど、わからん状態ですが、詳細な睡眠記録があれば自分にあった睡眠のスタイルを分析することはある程度できるだろうなという感覚はあります。

 

この機能本当ならすごいのですが、技術的なものなので判断できません。

 

③すっきり目覚まし機能

目覚めやすいレム睡眠時に起こしてくれる機能です。この機能は最近のスマホアプリでもよくありますが、スマホアプリは加速度センサーによって寝返りを測りレム睡眠を予測います。しかし、本来は脳波を測らないと正確にいつレム睡眠であるかを知ることはできないと言われています。「Neuro:on」は脳波を測ると豪語しているので、正確にレム睡眠の時を感知し、起こすのでアプリなどと比べるとより目覚めやすいのではないでしょうか。また音や振動だけではなく、光を使って起こすので、自然に近くすっきりした目覚めになることが予想されます。

 

最近は光で起こすこんな機器も出ていますね。

 

ムーンムーン(moon moon) 光目覚まし時計 OKIRO(オキロー) 光で起きてスッキリ目覚め シルバー
 

 「Neuro:on」はこれらの機能を駆使することで、多相睡眠の効率をあげ、普通の多相睡眠よりもさらに睡眠時間を短くしようという狙いのようです。アイマスクの機能やすっきり目覚まし機能があれば、睡眠の質は上がると思いますが、それによってどこまで多層睡眠の睡眠時間を減らすことができるかはわかりません。多相睡眠に関する論文を調べたのですが、日本語では見つけることができず、多相睡眠によるリスク等については未知数です。

 

結論

多相睡眠で睡眠時間を減らすことはある程度可能。しかし、日中の活動への影響や長期間の多相睡眠による健康へのリスクは未知数。また本当に紹介ページのような機能が実装できるのかということも使ってみない限りわかりません。これらのリスクを覚悟した上で、それでも多相睡眠を試してみたい人にとっては「Neuro:on」は多相睡眠の大きな手助けとなるでしょう。

 

個人的には、もし多相睡眠が実現できたしてもメリットがあるのは一部の人だけかと思います。というのも多相睡眠は定期的に睡眠をとらなければいけないので、学校や企業などで属している人には難しいと考えるからです。

 

いろんな要素を考えると、昼寝の活用や単相睡眠の質を上げることでゆるやかに睡眠時間を短くしていくほうが現実的ではないかと思います。また、多相睡眠としての「Neuro:on」についてはややネガティブですが、単相睡眠の質を上げる為に使う分にはかなり良いと思います!

 

長い文章にお付き合い頂き誠にありがとうございました!

  

番外編

「Neuro:on」に関する記事で「多相睡眠」についてwikipediaの文が参考にされているのですが、少し気になった記述があったので考えていきたいと思います。まず問題のwikipediaの文章がこちら。

 

多相睡眠Polyphasic sleep、分割睡眠 Segmented sleep, divided sleep)は、一に複数回の睡眠をとること。人工照明発明以前の人類が行っていた、動物の一般的な睡眠法。

 

 

睡眠を勉強している者としては、いきなり違和感を感じる文章に出会いました。

それは人間が本来は多相睡眠であるという書き方がされている点です。

 

「睡眠検定ハンドブック」には人間は新生児の時は多相睡眠であるが、成人になるにつれ単相睡眠になり、これは人間に独特な睡眠法であるという事が書いてあります。

 

しかも、人工照明が開発されることで多相睡眠から単相睡眠になったと書いてあるが、

人口照明と眠り方の変化に何の関係があるのでしょうか?

自然界の中で生活しており、いつ敵が襲ってくるかわからない状態であった原始時代は多相睡眠であったが、文明が発達して、安心して夜暮らせるようになって単相睡眠になったという話なら納得できるんですが・・・

 

なんだか変だな・・・と続きを読むと謎が解けました。

 

2相睡眠(Biphasic sleep)

電気照明が発明される以前の中世近世ヨーロッパでは、人々は夜寝始めの「第1睡眠」、夜中に目が覚めて朝まで寝る「第2睡眠」の2回の睡眠を取っていた

 

 

おそらくこれを指して人間は元々多相睡眠だったと言ってるんだと思います。

これはつまり途中目が覚めて寝れない時間があって、もう一回寝るということだと考えられます。そしてそれって睡眠障害の一種である中途覚醒とそっくりな気がします。

 

中途覚醒なら睡眠の質は悪いとは思うんですが、2相睡眠はどうだったんでしょうか?

そしてなぜ人口照明が発達すると2相睡眠になるのでしょうか・・・?

 

誰かわかる人がいれば教えて頂けると幸いです。